海辺のカフカ (下) (新潮文庫)
海辺のカフカ (下) (新潮文庫)の口コミ情報
おすすめ度:
喪失の果てに残された希望, 2008/12/21
上巻で、凄まじい勢いで展開し、拡大し、膨れ上がった世界観は、やっぱり物凄い勢いで、急速に集約していきます。
登場人物たちはそれぞれ、自力で自分の宿命に決着をつける。
宿命を完全に消化する人、新しい運命を切り開く人、新しい運命を引き継ぐ人、みんなそれぞれ、帰るべき場所に帰っていきます。
漠然とした世界観を「メタファー」の一言で片付けているように捉える人が居るのも理解できます。
この作品に対して、「理解できない」「意味がわからない」という感想を持つ事は、ある意味当たり前で、ごく普通の感覚だと思います。
ただ、この作品は(というか、村上春樹の全ての作品通じて言える事ですが)、抽象の元になっている具象を敢えて明確にしない事で、最終的な解釈を読者に委ねているんですよね。きっと。
敢えて答えの余地を残す事によって、読者ひとりひとりが、それぞれ違う解釈や感想を抱く事が狙いなのだと、私は勝手に思ってます。
そしてそれは、決して読み手側に何かを押し付けようとしない、書き手側の優しさの現れのように思えます。
私は、自分自身が、この作品を理解し切れているとは到底思えません。
それでも、「世界の全てはメタファーだ」という大島さんの台詞は、私の中で凄く強く生きていて、何度も何度もこれに救われた気がします。
元々、人間の脳(或いは心)=フロイトの精神分析の構図を分解し、物語という時系列で再構築したものが村上春樹の作品であって。
海辺のカフカは、村上作品の中で最も、人間の精神構造とか魂、意識や意志のような、観念的な方向に迫った作品だと思います。
村上春樹自身も、この作品で新しい視座を切り開き、拡張している。だからこそ、読み手にもそれが伝わり、新しい何かが切り開かれる感覚を覚えます。
村上春樹の長編は、絶望と喪失の果てに、僅かだけど確実な希望が残る、という展開がお決まりだけど、この作品の果てに残される希望は、ちょっと他作品とは種類が違う気がします。
読むたびに、脳が浄化されるような気がするのは、私の勘違いかなぁ。
とりあえず私は、この作品が、村上春樹という日本が世界に誇る作家の持つ一番新しい能力の集約だと思っています。
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村上春樹『海辺のカフカ〔下〕』|新潮社
ホーム > 新潮文庫 > 書籍詳細:海辺のカフカ〔下〕 ウミベノカフカ2. 海辺のカフカ〔下〕 村上春樹 /著 ... 新潮文庫の100冊. 780円(定価) 村上春樹/著. ムラカミ・ハルキ. 1949(昭和24)年、京都府生れ。 ...
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